さよなら、大好きな人
――ようやく一息つける気がした。

ラウルが戻って来るまですることもなかったために、きょろきょろと家の中を見てみる。

一人で住むには少し広い感じがして僅かに首を傾げた。



もしかしたら誰かと住んでいるのかもしれない。

でも、そんな気配が感じられないために益々不思議に思ってしきりに首を傾げていた所に、ラウルはトレーに二つのカップと一枚のタオルを乗せて戻ってきた。



「お待たせ。目冷やしたいって言ってたからとりあえず、タオルを濡らして持ってきたんだけど」


「あ、ありがと」


「どういたしまして」



近くにあったテーブルにトレーを置き、お茶を私の前とその隣に一つずつ置けば、トレーの上に乗っていたタオルを、はい、と差しだす。


それを受け取ってからひんやりとした感触を確かめながら礼を述べれば、ラウルは微笑みながら礼を受け取った。

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