さよなら、大好きな人
それに気付きつつも、俺はゆっくりとわかる範囲のことを話せば涙を堪えるように更に手を握り締める。



「それから俺は出来る限り、人と関わるのを止めたんだ。誰かに興味を持つことも、信じることも」


「……ラウル」


「ティナ。……君の抱えている苦しみをわかってあげたいのに、俺はどうしてもわからない。……他人を愛したことのない俺には、理解出来ないんだ」



――正確には理解したくない、というのが事実かもしれない。

弟を追い詰めて死に至らしめた他人を。愛したいという気持ちを。



でも、今はそんな自分が嫌だと思った。今の自分ではティナが流す涙を拭う資格がないとさえ思ってしまうから。

少しだけ憧れる気持ちだってある。誰かをただ一途に愛したことがあるティナを。



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