さよなら、大好きな人
5
*****―――――*****
どこか安心していた。今、私を取り巻く環境に。
優しく、暖かくて……それは故郷を思い出すような、雰囲気すらもあったのかもしれない。
――だからかな、すっかり忘れていた。
一つの場所に留まり続ければ、あの人と再会する可能性が高まることに。
旅をするのが普通のあの人にとって、この街が通過点である可能性であることさえ、今の私は忘れていた。
でも、何の因果だろう?
忘れるという約束を果たせない私への、一つの罰なのかもしれないとさえ思った。
……忘れたいよ、貴方のことを。この苦しさがなくなるなら、今すぐにだって忘れてしまいたい。
それが貴方への幸せに繋がることを私は知っているから。
でもね、それさえも私の勝手な思い込みなのかもしれないね。
だって、もう、貴方が何を考えているのかわからないから。あんなにもわかっていた貴方のことを、何もわからなくなってしまったから。
*****―――――*****