さよなら、大好きな人
他愛のない話をしながら歩いているうちに、目的地である教会へと着いた。


アンナさんが言っていたように、相手の方は今日到着するという話は街全体に伝わっているようだ。

教会前は賑わっており、見ようとしても見れるような感じではなかった。



見れずに終わるかな、と私が残念そうに表情を曇らせたことに気付いたラウル。

ざっと辺りを見回してからふと人が少ない場所を見付けて、手を繋いだまま引っ張って歩きだした。



突然のことに驚きながらも引っ張られるままに歩く。

人が少ないこともあり人を掻きわけてようやく視界が広々とした所で見えたのは、教会前にいる車椅子に乗った一人の少女。



「……可愛い」


私はぽつり、と小さな声で呟きを漏らした。



アンナさんが言っていたように、車椅子に乗っている貴族のお嬢様は病弱なのか、見るからに暖かい格好をしている。

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