さよなら、大好きな人
はっと慌てたまま張り紙を指差しつつ声を掛けた目的を言えば、女性は嬉しそうな笑みを浮かべながら事情を話す。



――結婚式。

その単語には少し興味が出るが、先にやるべきことをやってしまわなければいけないと思い、私は話を続けた。



「いえ……私もお金が、必要で」


「そうよね。きちんとお金は払うわ……えーっと」


女性はもちろんと微笑みながら頷きつつ店の中へと戻っていく。



後ろ姿を見ながら、先程聞いた結婚式へと思いを馳せる。


ここに来るまでに見た教会で式を挙げるのだろうか。

この街で式を行うのであれば多くの人が祝福してくれるだろうな、と思うと少々羨ましくなる気持ちとは裏腹に悲しい気持ちに包まれる。



自分もいつかは挙げられるだろうか、祝福されるような幸せな式を。


どうしても気持ちが沈んでしまうのを振り払うように、ぶんぶんと頭を振っていた私の元に女性が戻って来た。

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