さよなら、大好きな人
何度も謝る俺に対して、あの子は決して泣かなかった。

ただ、泣きそうな笑顔を浮かべてこう告げた。



『……貴方が大好き。本当に、大好きだよ。――だから、忘れる。貴方と作った思い出も、溢れるぐらいにある貴方への思いも、全部』



――俺も、大好きだったよ。

慰めのようにそう紡ぎそうになった言葉を飲み込んだ。あの子に今、それを告げるのはあまりにも残酷なような気がして。



……俺は忘れないから。どれだけ時間が経っても、俺にとって大切な存在なのは変わらないから。

それはもう、ただの幼馴染としてだけど。



忘れて欲しくないと心のどこかで思うけど、忘れることがお前にとっての最善な策なら俺は何も言わない。



ごめん。ありがとう。……そして、どうか幸せに。


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