さよなら、大好きな人
もちろん、それに気付かないロイはどこか苦しそうに表情を歪めながらもう一度名前を呼ぶ。


俺は特に何も言うことはしなかったものの、ここまでティナが頑なに話をしないようとするには深い理由があることぐらいは想像がついた。



戸惑いながら様子を見守っているミアは、何も知らないと見て間違えはない。

俺はそれを確認してから、ティナが何かかしら言ってくれればそれで解決するのだが、無理矢理に喋らせる訳にもいかずに僅かに首を傾げて考える。



――ティナがこうも怯えるような相手。

久しぶり、と彼が言っていたのを思い返せば昔の知り合いなのだろう。もしかしたら故郷の昔馴染みなのかもしれない。



だがそれだけの関係ならば親しげに会話をすればいいだけだろうに、それをしようとはしない。

ティナは当たり前のこと、ロイですらも顔を歪めながら名前を呼んでいる。

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