さよなら、大好きな人
それなりの因縁があるのだろう。

俺はそう結論付けながらも、ティナのことをそれほどまでに知っているかどうかと聞かれればほとんど知らないと答えるしかない。



うーん……、と軽く唸るとティナはそっと服を握り締めたままの状態で引っ張る。それに気付いた俺は僅かにしゃがみ込んで、ティナの背に合わせた。



「……ラウルに、話した、人、なの」


「え?」


「……。忘れなきゃいけない、人」

「……‼」



最初こそ理解出来ずに声を上げた俺であったが、更に言葉を続けたティナの言葉にようやく理解する。



理解してからゆっくりとロイへと視線を向け、その後にミアへと視線を向ける。

向けられた理由がわかったのかロイはそっと目を伏せ、ミアはきょとんと首を傾げるだけ。



「あの、何か……?」


「いや。……君の幸せの裏で、深く心を傷付けた人がいたってことだよ」


「え……?」


「ミアは、関係無いだろ。……責めるなら俺だけにしてくれ。俺が、好きになったんだ」

「……っ」



意味がわからなかったミアがおずおずと問い掛ければ、俺は答える事はせずに溜息交じりにそう告げる。

ミアは僅かに目を見開かせた。


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