さよなら、大好きな人


ラウルの言い方が気になったのか、ロイが話に割り込むように思ったことを告げれば、私は漏れそうになる声を必死に抑えてぎゅっと目を閉じた。



――今すぐにだって、声を上げてしまいたい。

大好きだって叫びたい。忘れられないって縋りつきたい。でも、そんな事をすれば彼は困るだろう。掴み掛けた幸せすら、なくなってしまうのかもしれない。



それだけは、駄目だ。彼の幸せを崩してしまうぐらいならば、自分が消えてしまった方がまだマシだ。



逃げてしまいたい、この場から。

でも、きっとラウルは自分の味方をして何らかのことを二人に対して言うかもしれない。その気持ちは嬉しいと思うけど、それでは意味がない。



自分が、言わなければいけないのだ。何でもいいから、たった一言でもいいから彼らに対して何かを。



私は口を開きはするものの、言葉が漏れることはなく、ぎゅっとラウルの服を握り締め続けていた。

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