さよなら、大好きな人
――自分が愛した人が選んだ女性は、自分とは似ても似つかない可愛い女性。


悔しい悲しいと思う反面、ああ、とどこか納得してしまった部分がある。ロイが好きになるのも当たり前だと思ってしまった。



それは自分が彼をずっと見てきた証拠で。

わかってしまうことさえも嫌になりながら、私は掠れた声でようやく声を紡ぐ。



「今は……」


「ティナ?」


「……今は、まだ、言えない、けど。……式当日には言うから」



掠れた声が届いたのか、最初に反応したのはラウルだ。

その後にロイとミアもその声を聞くかのように、視線をラウルの後ろにいる私へと向ける。



向けられたことに気付きながら、私は途切れがちになりながら必死に紡ぐ。


言わなきゃいけない言葉は、今言うことが出来そうにない。

でも、この言葉を言わなければ多分進むことすら出来ないのだということに気付いた。

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