さよなら、大好きな人
人通りが少ない道なのか聞こうにも声を掛ける相手が見付からず、きょろきょろと辺りを見回していた時だった。


ぽん、と突然後ろから肩を叩かれたために大袈裟過ぎるぐらいに私はびくんと身体を跳ねさせる。


恐る恐る振り返った私の視界の中に入ったのは、自分と同い年か1つ2つ年上だろう青年だった。



「あ……、ごめんね。驚かせちゃった、かな?」


「い、いえ、大丈夫です」



驚かせてしまったことに申し訳なさそうな表情を浮かべながら謝罪の言葉を口にする青年に、私はふるふると慌てたように首を横に振って安心させるように口を開く。



驚いてはしまったがどちらにしろ助かった、これで道が聞ける。

そう思った私が口を開く前に、青年は私が持っていたメモを横から覗きこんだ。


いきなり知らない男の人の顔がメモを覗きこむことで近くなったため、私は顔を赤らめた。



「あ、あの?」


「ここに行きたいの?」



戸惑いながら声を掛けると、青年は視線だけ向けて問い掛けてきた。



「は、はい……。頼まれた仕事なので」



慌てたように頷いて答えると、青年は少し驚いたような表情を浮かべている。

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