さよなら、大好きな人
少し遠いが幸せそうに笑っているのが見えたので、私は安心したように表情を緩める。

あの笑顔を曇らせずに済んで良かったと心からそう思いながら。



その時、ロイとミアさんが誰かを探しているような様子が見て取れたために、私は首を傾げた。


彼らの視線がこちらを向いたと同時に、二人がこちらへと近付いて来た。

ロイがミアさんを支えながらゆっくりとではあるが。



「ここに居たのか」


「……人が多くてね。……そう言えば俺は言ってなかった。おめでとうございます」



ロイが最初にそう声を掛けると、ラウルは苦笑を浮かべながら簡潔にそう述べた。
その後に、ふと思い出したように言葉を紡ぐ。



「ああ、ありがとう。それでその、ティナ。ちょっと話があるんだけど、いいか?」


「え?い、今?」


「すぐ終わるよ。ミアも一緒に」



お祝いの言葉にロイは嬉しそうに微笑みながらラウルから視線を外し、そのまま私を見ながら声を掛ける。


少々焦りを見せる私を安心させるようにロイは言葉を続けた。

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