さよなら、大好きな人
それをぎゅっと握りながら私が礼を述べると、アンナさんは瞳を潤ませながらも泣かないように必死に堪えている。

アンナさんが掛けてくれた言葉に、私はこくりと頷く。



一言二言話すと外へと出ようと歩き出した私を見て、アンナさんが問い掛ける。



「ラウルくんには、言ってあるの?」


「……いいえ。よろしく、言っておいて、ください」



問い掛けられた内容にびくり、と私は身体を震わせる。

しかし、ふるふると首を横に振って頼むように言葉を告げて、そのまま外へと出た。





□□□□□


私は寂しげにその後ろ姿を見送りながら数分の間その状態で居ると「おはようございます」と店の方から声が聞こえて、私は慌てたように店の方へ向かった。



まだ開店するまでには時間があるので急用の相手かもしれない。

そう思いながら向かった先にいたのは、ラウルくんの姿だった。

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