心にきみという青春を描く
「なあ、お前は夏のコンクールどうする?」
放課後の美術室。使い終わった筆を流し台で洗っていると、隣に日向がやってきた。
「うーん。つまんなそうだからやらないかな」
絵のコンクールは過去に何回か出したことはある。賞ももらったことがあるし、有名な画家の人に評価されたこともあった。
でも中学になって、絵を描くことは好きだけどコンクールに出品する意欲はあまりなかった。
だってほとんどのコンクールが紙や画材は自由でも、描く絵のテーマが決まっている。
日向が言う夏のコンクールでは【地球】だそうだ。
本当につまらないテーマだと思う。地球をバカにしてるわけじゃない。
でもだったら宇宙をテーマにして架空の星を作ってその中にどういう街があるとか、どういう人が暮らしているとか、個性が強くでるほうが絶対に楽しいのに。
それを日向に伝えたら『現実感たっぷりの人物画を描いてるヤツがなに言ってんだ』って、呆れられた。
人の顔を好んで描くようになったきっかけも正直曖昧だ。でも人を描くと、その人の心まで描けたような気分になる。だから俺は人物画が好きなんだと思う。