心にきみという青春を描く



「俺、日向ってピカソの生まれ変わりだと思ってるんだけど」

「こえーよ。急にどうした?」
  
部活が終わり、俺たちは正門に向かって歩いていた。


日向の絵は色使いが大胆で、タッチも本能的。
色んな人の絵を見てきたけど、日向ほど衝撃を受けた人はいない。

絵は名刺と同じで必ず完成した作品には描いた人の名前が題名と一緒に記載されるし、顔を知っていれば尚更に絵と交互に存在がちらつく。 


でも、日向にはそれがない。

どんな絵を描いても、日向だと分かっていたとしても作品がいい意味で自立していて。もし日向が将来、画家になったら絶対にずっと描き続けていける人になるだろうなって思う。


「三上くん」

と、その時。テニス部の女子から声をかけられた。

名前は……なんだっただろう。難しい漢字を使った当て字だったから、よく覚えない。


「途中まで……一緒に帰らない?」

指先を何度も組み直しながら、小さな声で言われた。女子の後ろには友達も何人かいるし、中には『頑張れ』と応援してる人もいる。


「一緒?なんで?」

盛り上がっている空気とは裏腹に、俺はありのままの疑問を返した。


「な、なんでってそれは……」

「用があるならここで聞くけど」


冷たく言ったつもりはなかった。俺としてはいつもどおりの声とテンションだったはずなのに、女子は瞳を潤ませて走ってどこかに行ってしまった。


「ちょっとは察しないよ!バカ」

なぜだか俺は周りにいた女子たちに怒られてしまい、まったく意味が分からない。

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