心にきみという青春を描く



「お前は本当に思わせ振りなやつだな」

隣で日向までもが呆れた顔をしていた。


「思わせ振り?俺、なんにもしてないよ」

「優しくしてたじゃん、この前」

「あれは黒板の上の文字が消せないって背伸びしてたから消してあげただけだよ」

「それでも女子は自分だけ特別に優しくされたって思うんだよ」


じゃあ、放っておいたらよかったんだろうか。なんだかそれはすごく可哀想な気がするけれど、日向はきっと手を貸したりしない。

本人いわく、優しくしていいのは好きな女にだけなんだそうだ。顔に似合わずとても甘いことを言う。


クラスメイトたちから日向は怖くて冷たい人、なんて言われてるけど、もしかしたら本当に冷たいのは俺のほうなんじゃないかって思う。

どんなに優しく接しても、そこに特別な意味はないし、さっきのように『察しろ』なんて言われても、正直あまりピンとこない。


たぶん、俺は絵を描くこと以外に興味がないのだ。


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