心にきみという青春を描く
「……葵っ!!」
日向の叫ぶ声にハッとした俺は、ゆっくりと後ろを振り返った。
ドクンッ……。
そこには道路に倒れている葵の姿。
透き通るような白い肌からは真っ赤な血が流れていて、いつも元気は葵がピクリとも動かない。
「葵!葵っ!」
呆然としている顔とは違い、日向は何度も名前を呼んで、その小さな身体を抱きしめる。
「おい、救急車……。早く救急車を呼べ!!」
怒鳴るようにして言われ、震える指先でポケットからスマホを取ったけれど、うまく掴むことができずにガシャンと下に落ちる。
結局、救急車を呼んだのは車の運転手だった。役立たずな俺とは違い、日向はずっと葵に声をかけ続けていた。
――『日向葵(あおい)です』
走馬灯のようによみがえってくる記憶。
『自分の足に絡まることってありません?』
いつも明るくてひまわりのように上を向いていた葵。
『……じゃあ、先輩の言葉なら信じてもいいんですか?』
初めて特別だと思った女の子。
『私ね、大好きな家族に囲まれて、大好きになった先輩と付き合えて、こんなに幸せでいいのかなって。あとでバチが当たるんじゃないかって怖くなるくらい』
やっと目の前で起きたことを理解して、葵に駆け寄った時には到着した救急車に運ばれていくところだった。