心にきみという青春を描く



「メラニンが少ない体質の人だと赤くなりやすいらしいですよ」


どうやらやり取りが聞こえていたらしい。さすがは知的な詩織先輩と感心していると……。


「なぎさは肉をガツガツ食わないからそんなにひ弱なんだよ」と松本先輩も会話に入ってきた。

すると、「いや、ガツガツ食べて強くなられても暑苦しいだけですよ。松本先輩はふたりもいらないです」と、天音くんが毒を吐く。


結局、ああだこうだと日焼けの話からお肉の話に変わり、最終的にはみんなで焼き肉に行こうと盛り上がった。

いつもの騒がしい美術室。やっぱり五人で話している時が一番楽しい。


――ガラッ。

と、その時。部屋のドアが開いて藤田先生がやってきた。藤田先生も合宿以来こうして部活に顔を出すようになっていた。


「先生10分遅刻です。顧問が時間にルーズだと、美術部員全体の絞まりが悪いと思われるのでやめてください」

まあ、先生以上にしっかりしている詩織先輩がいるので、顧問らしいことをしているかと聞かれたら微妙なところだけど。


「職員会議が長引いたんだよ。俺のせいじゃねえから」

先生らしくない口調にはもう慣れたけれど、なんだか今日は真面目な話があるようでみんなの顔が見えやすい黒板の前に先生は立った。

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