心にきみという青春を描く



「えっと、また来月に美術のコンクールがあります」

ゴホンッと咳払いをしたあとに、先生が話はじめた。


「今回のは誰でも参加できるものじゃない。選考審査を通過した作品だけが出品できる美術展だ」

和やかだった美術室の空気がガラリと変わる。


「全日本にある高校を対象に在学中の生徒のみが挑戦できる大きなコンクール。いわば美術で高校生の一番を決めるってわけ」

……高校生の一番。なんだか言葉だけで緊張してきた。


「ただし最初から学校名や個人名などは伏せて選考されるから、作品の出来が悪かったら今までの受賞履歴は関係なく落とされる。本当に作品の魅力だけで賞が決まる大会だ」


先生の説明にみんなで顔を見合わせる。

話しによると、二重応募は禁止のようで夏休み明けの美術展に出品予定の作品などは全日本のコンクールには出せない。

すでに参加すると表明している詩織先輩、松本先輩、天音くんは来月までに新しい作品を描く時間がないので不参加。

当然、本格的に絵を描きはじめて3か月余りの私では、技術が追いついていないので選考で落とされる。そうなると必然的に……。



「三上、お前出してみないか?」

先生の言葉に、みんなの視線がなぎさ先輩へと向く。

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