心にきみという青春を描く



「あ、そうだ。これ」

先輩が思い出したように、なにかを差し出した。それは布生地のカバーに包まれた一枚のキャンバス。


「あ……」

中を確認すると、それは先輩が描いてくれた〝私の絵〟だった。

 
あのコンクールで賞をもらった人は引き続き美術館に展示される決まりになっていたので、コンクールが終わっても手元に返却されてないことは知っていた。


「昨日、戻ってきたんだよ」

わざわざ重たかっただろうに。私のためにキャンバスを持ってきてくれたことは分かっている。


美術館で食い入るように見た絵も、こうして重みを確かめながら見ると感動が違う。

三宅さんを美少年に描いてしまったように、私もなんだか可愛く描いてもらえた気がする。


自分をモデルにした人物画を描いてもらえることだけですごいのに、それを先輩が描いてくれたなんて……。

私は一生分の幸福を使いきってしまったんじゃないかな。


「この絵はなつめにあげる」

「えっ!」 

ビックリして、声が大きくなってしまった。


「そ、そんな恐れ多いです!」

後に調べたら先輩がもらった秀作賞は最優秀賞の次に良い賞だった。そんな作品を私だけ独り占めすることなんてできない。

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