心にきみという青春を描く
「先輩は教室移動ですか?」
「違うよ。今日も朝美術室に行ったんだけど、あまりの暖かさに居眠りしちゃって」
教室から次の授業へと移動してる最中かと思えば、どうやら美術室から出てきたところだったようだ。
「それで寝足りないから今から保健室に行くところ」
先輩はそう言いながらあくびをしている。
「そんなに堂々とサボっていいんですか?」
「だって保健室の先生、許してくれるもん」
あの美人の先生の顔が頭に浮かぶ。きっと私が同じことをしに行っても追い返されると思う。
ってことは昨日、笹森先輩が男子生徒だと態度が違うと言っていたことは本当なのかもしれない。
美人の先生となぎさ先輩がふたりきり。先輩は甘い顔をしていて母性をくすぐる感じだから、大人の女性からしたら堪らなく可愛いと感じると思う。
「だからなんで怒るの?」
無意識に私はまた口を尖らせていたようだ。
「別になんでもないですよ。私は髪の毛を結びに行くんで、さようなら」
「うん。ばいばい」
その呆気ないばいばいにもモヤモヤしているなんて、先輩はこれっぽっちも気づかない。
一階へと続く階段を降りていく先輩を見つめながら、私は深いため息をはいていた。