心にきみという青春を描く
「どこ?」
「お尻です」
「ここ?」
「うわ、手にもついてます!それで触ったら二次被害なのでまずは手の絵の具を水で洗いましょう!」
私のほうがあたふたとしていると、何故かクスリと笑われてしまった。
「しっかりしてるね。きみのほうが先輩みたい」
と、いうことは、やっぱりこの人は同級生じゃない。喋り方や雰囲気は子どもっぽいけれど、こんな目立つ容姿の人がいたら入学式の時に気づいただろうし。
「……私がしっかりというより、絵の具がついたまま気づかずに帰ろうとしちゃう先輩が少し抜けてるというか……」
言ったあと、しまったと口を抑えたけれど怒られることはなく、「よく言われる」と、柔らかい表情で先輩は言った。
「……な、名前聞いてもいいですか?」
また出逢って数分なのに、知りたいと思ってしまう先輩の魅力。
「いいよ。俺は三年の……」と、先輩が言いかけた瞬間に、ドタドタと大きな足音が廊下に響き渡り、勢いよく美術室にまた男の人が入ってきた。
「お、いるじゃん、なぎさ!」
足音と同じくらい声が大きい人。なぎさという名前は、隣の先輩に向けられていた。
「あのさ、ここ草原じゃないんだよね。声のボリュームなんとかならない?」
なぎさ先輩は呆れ顔。