心にきみという青春を描く
松本先輩のお父さんが昔は有名な油絵画家だったということ。腰を悪くしてから筆を置いてしまったようだけど、松本先輩はお父さんの描く絵を傍で見ながら育ったらしい。
なので、松本先輩も自然に油絵を学びはじめたけれど、『ああしろ』『こうしろ』と厳しく指導された結果。嫌気が差して真逆の彫刻をはじめたんだとか。
「油絵が全てじゃないし、拓人は彫刻の才能もあるんだから好きにやらせてあげればいいのにって思うけど、親心としてはそうもいかないんだろうね」
松本先輩のお父さんは自分が描けなくなってしまったから代わりに描いてほしいという気持ちもあるのかもしれない。
松本先輩が描く油絵を見てみたい気もするけど、なにかを制作している先輩はとても楽しそうだから、それを認めてほしい気持ちもある。
「なぎさ先輩はどうしてアクリル画をはじめたんですか?」
「……うーん。忘れちゃった」
先輩は誤魔化すように眉を下げた。もしかしたらあまり聞いちゃいけないことだったのかもしれない。