心にきみという青春を描く
私は思わず、筆を下ろししていない穂先のように固まってしまった。
「わ、私がなぎさ先輩を好き、ですか?」
動揺しすぎて日本語がおかしくなる。
「うん。そう見えるけど」
詩織先輩の言葉に改めて自分の胸に聞いてみる。
私は、なぎさ先輩のことが好き?
たしかに先輩は目が離せないし、優しいし、ドキドキさせられたことは何度もある。けれど、私はそれを恋と結びつけていなかった。
だって私は恋なんてまだ未経験だし、始まり方なん知らなかったから。でも、私は松本先輩には胸をときめかせたりはしないし、同級生の男の子にもそう。
なぎさ先輩にしか動かすことのできない私の中の感情のスイッチは確実に存在する。
それはひとつじゃなくていくつも。
先輩が魅力的で私にないものばかりを持ってる人だから憧れてるだけだと思ってたけど……。
これはやっぱり、恋なのだろうか?
黙りこんだ私を見て詩織先輩に「そんなに難しく考えなくても」と、笑われてしまった。