心にきみという青春を描く



「なつめも描かせて」

「え、でも、そもそも上履きに落書きしていいんですか?」

洗っても絶対に落ちないし、他でしてる人がいないからかなり目立つ。


「逆に落書きしちゃダメなんて言われてないし」

いや、だからってしていいことにはならないと思うけど。


「怒られたら俺のせいにしていいから」と言われて、私は右足の上履きを先輩に渡す。先輩は自分のものと同じ後方の真横に星マークを描いて丸で囲った。

「はい」と戻ってきた上履きはただの上履きなのに魔法にかけられたみたいに可愛くて、何度も見てしまう。


「じゃあ、次は芦沢ね」

「僕はいいですって……ちょ、ちょっと!」

先輩に無理やり脱がされて天音くんも道ずれ。

そのあと部活に来た松本先輩はノリノリで上履きを差し出し、詩織先輩は当然拒否をしたけれど、隙を見て描かれてしまい、ひどく叱られていた。


やっぱり五人揃っていると賑やかだ。それでなぎさ先輩がみんなに描いた星マークがまるで美術部員のマークみたいで、嬉しくなった。

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