心にきみという青春を描く
「あー今日も楽しかった」
部活終わりの帰り道。私は分かれ道がある途中までなぎさ先輩と一緒に帰っていた。先輩は自転車を手押ししていて、からからと回る車輪の音が心地いい。
「詩織先輩、本気で怒ってましたよ」
「うん。あと芦沢も呆れてたね」
それでも先輩はすごく笑顔だった。
最初はタイプの違う部員ばかりでどうなるか不安だったけれど、なぎさ先輩の柔和な性格がうまく中心となってまとめてくれてるような気がする。
「先輩、昨日言い忘れてしまいましたけど、バスで送ってくれてありがとうございました」
私が先輩の傘係になって家まで送り届けるはずだったのに、結果的に先輩の負担を増やしてしまった感じもしてるけど。
「よかった」
先輩が私の顔を見て何故かホッとしている。
「昨日からちょっと様子がおかしかったし、今日も部活に来た時に目も合わせてくれなかったから嫌われたかと思ってた」
「き、嫌うはずないです!すいません。私がその、勝手にモヤモヤとしてしまって……」
「モヤモヤ?なんで?」
絵を塗り潰してる理由を知りたい。最初に部屋に上げた女の子のことを知りたい。なぎさ先輩のことをもっと知りたい。
そういう気持ちが抑えられずに不機嫌になってました、なんて……言えるはずがない。