雨とさえずり
第一章
ぽつり、首筋に一粒落ちてからは早かった。それから泣き叫ぶ様に雨は降りしきった。隣に聞こえそうだった鼓動さえ、今は自分にも聞こえないくらいになっていた。
六月中旬。梅雨の真っ只中に、傘も持たずに登校したことを、今になって後悔した。雨宿りのために、ガレージの閉まった駄菓子屋らしき店に着いた時には、既に制服は絞れそうなほど水を吸い込んでいた。髪先から滴るしずくが、首筋を伝っていくのが少し気持ち悪い。濡れたカーディガンがブラウスに水を染み込ませ、じんわりと体温を奪っていく。それでもなお、顔の火照りだけは冷めることを知らない。
「……………環。」
呟いて、思わず辺りを見渡した。勿論、そんなに大きな声を発したわけではないので、雨に掻き消されて、それこそ自分にしか聞こえていないはずだ。でも、何故か手で口元を抑えてしまう。
次第に暗く染められていく空をぼんやりと見つめながら、先程のことを思い巡らせた。
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