あの日、もう一度
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「…梨乃、ごめん。」
最期の懺悔の言葉さえも波でかき消される。
「突然どうしたの?」
誰にも聞こえていないはずの声に返答があり目を丸くした。
目の前には不思議そうに僕を見つめる君がいて、慌てて辺りを見回すより先に珈琲の匂いが鼻を掠める。
よく二人で通った喫茶店に、僕はいた。
「お待たせしました。フレンチトーストと卵サンドです。」
顔見知りの店員さんが微笑ましそうに僕たちを交互に見て去っていく。
梨乃は変わらずキラキラした目でそれを眺め、静かに口へと運ぶ。
幸せそうな表情に鼻の奥がツンとした。
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