魔法界の魔法使いには人間界の魔法使いに負ける落第生がいます

ライサVS特別系

「着いた・・・・・・」

ライサの森へテレポートしたあたしたち特別系の九人

鬱蒼と生い茂る木々や可憐に咲き誇る草花をながめながら、あたしたちは辺りを見回した

特別変わったところはない。つい昨日来た時とあまり変わらない

昨日はキュースという、イタズラ好きな妖精を軽く痛めつけた

イタズラがすぎることがあるから、注意も兼ねて

イタズラは軽いものをすることという条件で離してやったんだけどね

ぴりぴりと張りつめた空気の中、突然悠が叫んだ

「右上、時速90kmで迫っています!」

その言葉に警戒を示した瞬間

あたしの左横を、何かが通り抜けた

その直後

「かはっ・・・・・・」

苦しそうな、声が聞こえた

ちょうど何かが通ったところから

はっとして振り返ると、そこには

真っ黒な槍に肩を貫かれた聖理奈がいた

「聖理奈・・・・・・?」

肩からおぞましいほどの量の血を流し、短い呼吸を繰り返す聖理奈

血の気が引いた

あのドラゴンを思い出す

「あ・・・・・・ああ」

青ざめて、ふらふらするあたしを美里が受け止めてくれた

「紗奈!」

紅梨先輩の声で、紗奈先輩がさっと飛び出し、治癒を始める

「紗奈、彩音、治癒をお願い。彩音は無理しなくていいわ。あたしたちは、ライサをやってくる」

その間にも、結斗先輩や陸先輩。和也先輩や美里も悠も

全員が、走り出していた

「頼むわよ」

それだけ残して、紅梨先輩も皆を追うように去っていった



「彩音ちゃん・・・・・・大丈夫?」

治癒を続けながら、紗奈先輩はあたしを気遣ってくれた

我を取り戻して、あたしも治癒を始める

「大丈夫です・・・・・・すみません」

ぐっと下唇を噛み締める

こんなんじゃ・・・・・・だめだ

体が動かなかった

あの時のドラゴンのことを思い出した

粗い呼吸を繰り返す聖理奈

このままじゃ助からないかもしれない

なら、あたしがすることはただ一つ

あたしは・・・・・・あの頃のあたしじゃない

魔法界にいた頃のあたしじゃない

あたしは・・・・・・新しい神崎彩音になる!
< 130 / 196 >

この作品をシェア

pagetop