魔法界の魔法使いには人間界の魔法使いに負ける落第生がいます







風を感じて、目を開けた

そこに見えたのは────

「そ、外?」

「おい嘘だろ・・・・・・」

流石の悠もぽかんとして、そう零した

そこは、まだ出ることは無いだろうと思っていた優凛学園の敷地外────空だった

優凛学園が見渡せる、そんな場所

「あの日、あたしはここで記憶操作の魔法をみんなにかけた・・・・・・学園長と水野先生を除いてね」

突然、背を向けたままそう言い出した彩音

その言葉には、哀愁が漂い、とても悲しそうな目をしていた

「その魔法は完璧に成功した・・・・・・皮肉なくらいに。だから、もう思い出してくれることは無いだろうと思ってた」

そして、くるりとあたし達の方を向いた

その目は、涙で溢れていて

「絶対に、叶わない願いだと思ってたから・・・・・・とても嬉しい」

風に煽られて涙が横に流れる

・・・・・・やめてよ

もらい涙、するじゃない・・・・・・

「お前・・・・・・自覚してんのか?」

半分涙、半分ため息混じりに美里は言った

・・・・・・分かるわ、その気持ち

「大丈夫よ美里・・・・・・彩音は生粋の無自覚なんだから」

「それもそうだな」

あっさり認めた美里

最初からわかってたんじゃないのかしら・・・・・・

変わらないわね、彩音は

「ちょっとくらい、顔拭けよ」

呆れたように悠は、顔をそむけながら彩音に言った

悠の気持ちも、とてもわかるわ

涙で顔がぐちゃぐちゃだもの・・・・・・せっかくの美少女っぷりが台無しよ?

「あはは・・・・・・」

一瞬キョトンとして、それから意味を理解したらしく

彩音はぐいっと片手で涙を拭った

「聖理奈、美里、悠・・・・・・」

そっと、絨毯に並行して翔ぶ、みんなを見た彩音

「紅梨先輩、紗奈先輩、和也先輩、結斗先輩・・・・・・陸先輩」

そして、小さな小さな声で、彩音は言った

「思い出してくれて、ありがとう。これからも、よろしくお願いしますっ・・・・・・・!」
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