☆君との約束




『相馬……誰や?』


相馬は七歳になり、もうすぐ八歳の誕生日を迎えるって時。


『相馬って、誰?誰のことを話してるん?』


和子がそう言って、相馬の前ではなかったにしろ、それを聞いていた莉華が怒った。


―パンッ!


普段、怒りもしない莉華が、だ。


和子の頬を思い切り叩いて、泣きながら、


『あんたみたいな母親を持った相馬が可哀想だ!相馬を傷つけるんだったら、金輪際、近づかないでっ!あの子を呼び寄せないで!あの子をっ、無闇に傷つけないで!!』


そう、怒ったんだ。


それは俺らが言いたくて言いたくて、言えなかった言葉の数々。


でも、和子は泣く莉華を不思議そうにそれを見て、理解できないというように、首を傾げた。


きっと、莉華とは違う、これは和子の保身。


どうやって自分を守ってあげたらいいかわからなくて、それで、結局、こんなやり方を取って。


逃げているだけ。


莉華とは違う……立ち向かうことすらを諦めて、逃げているだけ。


莉華は怒ったまま、相馬を抱いて。


『帰ろう、陽向』


―それから、あの日までは俺達が本家によることは無かった。




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