☆君との約束



『―相馬っ!!』


まさか、一人で和子に会いに行こうと思える勇気がまだ、彼に残っていたなんて。


あんなにボロボロに傷つけられたら、普通、会いたくないと思うものだろう?


和子の部屋とされた場所の前で、障子を少しだけ開けた相馬は何故か狂ったように笑って、自分の頭を掻きむしって。


尋常ではないその様子に、駆け寄った。


部屋から臭う、異常な血の匂い。


鬼の血を引くためか、敏感な俺達は。


『莉華!相馬を……っ!!』


『相ちゃん!』


障子を思い切り開けて、莉華に相馬は任せて。


莉華は中の様子を見ると、軽く悲鳴をあげて、そして、相馬の目を覆い隠す。


『見るな!大丈夫、大丈夫だから!!』


莉華の腕には力がこもり、俺は声を張り上げる。


運がいいのか悪いのか、ちょうど帰ってきた陽希たち。


俺の声で、騒ぎが広まる。


『誰かっ、来い!今すぐ……っ!!』


人の駆ける音がする。


相馬の様子が、どんどんおかしくなる。


『ハハハッ!ハハハハハッ!!!』


―相馬は泣いていた。


泣きながら、大声で笑っていた。


大声で笑って、泣いて、そして、狂ったように叫んで。



< 112 / 119 >

この作品をシェア

pagetop