☆君との約束




『"ざまあみろ”って!"ざまあみろ”って!!』


それはきっと、和子が相馬に言った言葉。


近寄ってみると、まだ、首元を切ってからの……自殺を図ってからの時間は短くて、助けようと思えば、助けられた。


京子の力を使えば、不可能ではなかった。


でも、和子を救いたいと願うものは、誰もいなかった。


狂ったように泣き笑いながら、相馬の形容が変わっていく―……。


『陽向伯父さん!』


駆け寄ってきた総一郎はその場の様子を確認すると、


『……漸くですか』


自分の母親の死に驚くことも、悲しむことも無く、相馬の鬼化した姿を見て。


『どうして、お前ばかり―……』


苦渋に顔を歪ませ、


『眠れ、相馬。お前が覚えているのは?母親が、死んだことだけでいい』


相馬の頭に手をかざして、眠らせた。


それは、魘される相馬にいつも、俺がかける術。


やはり、総一郎は陽希と同じではなく、俺と同じ特性の持ち主だった。


その日、相馬の記憶を少しだけ操作して……ってことが出来れば、どんなに幸せだったろう。


そんな力は持ち合わせていなかった俺達は、相馬に忘れさせることに必死で。


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