☆君との約束
「……陽向さん?何を考えてます?」
「ん?いやー、お前の小さい頃にそっくりだなと」
「……」
微妙な顔。
こんな羞恥プレイはないってか?
「えっ、相馬の小さい頃!?聞きたい!」
「いいぞー」
「沙耶!話さないでください、陽向さん!!」
自分でも、碌でもない過去と思っているのか。
「大丈夫だ、相馬。女遊びを始めるまでのお前は純真で、ただ、ただ、天使だったぞ」
「っ、だから、嫌なんですよ!」
「えっ、なんで?女遊びしている人より、純真な子供の方が可愛げあるよ?それに……今更、あんたがどれだけ遊んでいたとしても、私、気にしないけど……」
「俺が気にするの!」
感情豊かになった、可愛い息子。
妻からの突っ込みに、思わず笑うと、莉華も笑っていて。
「……」
色んなことがあった人生だけど、
色々ありすぎた人生だけど、
それは、それで、
それなりに幸せだったかもしれない。
莉華を傷つけられたことは、死ぬまで許さんが。
「……って、陽向さん、何ですか」
沙耶の夫の性事情に関しても前向きすぎる発言に拗ねたのか、莉華と反対側に座った相馬の頭を撫でて、おかしさを堪えながらも、また、別の意味で笑う。
何となく、莉華とは手を繋いで、微笑み合って。
「んいや?何でもねーよ?」
幸せの形も、
愛の形も、きっとそれぞれ違うけど。
「なんでもないなら、その緩んだ顔は……」
若い頃の人生は、本当に順風満帆に幸せだったとは言えないけど。
それでも、今の自分は、間違いなく幸せで。
莉華が、愛する人が隣にいる日々は、ただ幸せで。
「幸せだなあ、って、思っただけだ」
例えば、苦しい日があったとしても、いつかは暖かな幸せを連れてきてくれるから。
生きている意味を、連れてきてくれるから。
「陽向」
―君と居られる、奇跡のような幸せを、ただ大切にこれからも。
『お互いを、生涯愛し抜く』
その約束だけ、守って。
〜完〜