☆君との約束
変わることない世界で side陽希
この世に生まれ出てから、俺達は多くを見て、経験してきた。
物心がついた時、自分達2人にいたのは多忙な母親。
色気などなく、男の気もなく、ただ毎日ひたむきに、がむしゃらに働いている母親だった。
構ってあげられなくてごめんね、と、謝られることも多かったけど、俺らは幸い双子で。
1人でなかったし、1人じゃないからこそ、寂しいという感情もあまりなかった。
年頃では、自由に生きられることが嬉しかったしね。
そんな自分達の父親が、御園の当主と知った時はいつも冷静な陽向でさえも驚いていた。
そして、それでも自由に生きたいと望む俺たちを、父親は許してくれた。
母さんがずっと、一人でいた理由を把握できるほどに……優しくて、脆くて、それでも、当主の器であり、母さんに対しての愛が深い人。
何度も、何度も、どうしてそんなにも母さんに溺れているのか理解できない場面はあった。
母さんを見る目はいつだって優しくて、母さんにとても甘い父さんは母さんに接するように俺たちにも接し、愛してくれた。
御園の名前を隠したまま、学校に通った。
それでも、告白してくる子達は絶えなかった。
顔、成績、運動……よく分からないけど、そういう分野に秀でているものは女の子に人気が出るらしい。
勉強は好きではなかったけれど、『ちゃんとやってて後悔はしない』と言う母さんの言葉で、俺は頑張った。
一方で、頑張らなくてもなんでも完璧にこなしていた弟の陽向はいつだって人生をつまらなさそうに生きてて、告白されても心には届かず、いつも遠くを寂しそうに見ていた。