☆君との約束



陽向が笑うようになったのは、一重に莉華のおかげ。


莉華が笑えば、陽向も笑った。


人を愛すことを知った陽向は、誰よりも幸せそうだった。


いつだって、自分勝手に振舞った。


食べたい時に食べ、寝たい時に寝る陽向。


本当は誰よりも優しいくせに、優しさを見せない。


それが、本当の優しさではないと知っているからだ。


昔、陽向は恐らく好きになった人がいた。


その人は、自分の為に人を傷つける女だった。


陽向もまた、その女に騙され、裏切られた。


それからだ。


全て、諦めているのは。


自分が冷たく接して、相手を傷つけることで、自分が幸せになることを封じている。


無意識に、幸福を遠ざけている。


その事に、両親は気づいてた。


だからこそ、2人の結婚に賛成したのだ。


莉華が陽向を救ってくれると確信したから。


それなのに、こんなことになった。


莉華を壊したのは、数多の力。


その中には嫉妬、憎悪、その他諸々の力も働いていて、陽向は怒り狂っている。


双子なのに何もかもが全く違う弟は、今、この瞬間も、俺の目の前で血を浴びる。


「……通っていいよ。陽希」


父から譲り受けた日本刀に付いた血を拭き取り、彼は微笑む。


綺麗な顔を美しく、歪ませる。


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