☆君との約束



「……莉華は俺がいることを、望んでくれてると思う?」


陽向は自分を責めている。


自分が手を伸ばして、一般人だった莉華を引き込んだから、こんなことになったのだと悔やんでる。


「望んでるよ」


でもな、俺は断言できるよ。


莉華は、お前の死など望んじゃいない。


望んでいるのは、お前との確かな未来だった。


俺の確信を持った言葉に泣きそうに笑った陽向。


「あのな、陽希」


「ん?」


「俺、お前の弟でよかったと思うよ」


「……どうしたんだ、急に」


唐突な言葉に戸惑っていると、陽向は。


「孤独だった莉華に、俺は"家族”をあげたかっただけなんだよ。だからね、死んでいった自分の子供に対して非情だと思われるかもしれないけれど……」


「ああ」


言いたいことはわかってる。


「俺は子供なんてどうでもよかった」


「ああ」


「莉華がいれば……いてくれれば、何もいらなかったんだよ」


泣きそうなその声に、俺の胸は締め付けられた。


彼女と子供の命のどちらかという選択を迫られても、陽向は間違いなく、莉華を選んだだろう。


莉華は陽向の心を動かした。


死んでいたとも言えるほど、人から遠ざかっていた陽向の心を動かし、溺れさせた。


御園に入って、毒を盛られても。


女達の嫉妬を一身に受けても。


怪我をさせられても。


怒る陽向をなだめ、気丈に笑ってた莉華。


―自分が傷ついても笑い続けた莉華を破壊したのは、自分のせいで陽向が血を流したのを見たせいだ。


それで壊れてしまった。


それを知っているから、目の前で崩れ落ちた彼女を忘れられないから、陽向も自分を責めることを止められない。



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