☆君との約束
「俺、どうすればいいかな……?」
「帰るのが一番いいと思うよ、俺は」
顔を上げ、刀を構えて。
「このご時世、こんなことをするのは違法のはずなのにね」
「これが、御園が抱えてきた闇の大きさというわけだろ」
全ては、御園の歴史のために。
「陽向」
「何、陽希」
「お前は自分の選択を後悔しているようだが―……」
俺だって魅雨を傷つけられて、激しい怒りを覚えた時もあった。
それでも、魅雨を手放せなかったのは。
「俺は"甘寵殿”なんかから妻を選ばなくて正解だったと、過去の自分を褒めるぞ。おかげで、本気で愛せるものと出逢えたんだから」
―ただ、愛していたからだ。
魅雨を愛して、魅雨も愛してくれたから。
だから、俺は帰らなくちゃならないんだ。
「お前は、どうなんだ?」
問われて、陽向は拒絶しようとした。
そして、拒絶しようした時に莉華は見えない力で、潰されたのだ。
「拒絶しろ、陽向」
「……」
「父さんと母さんでも防げないその力を、ずっと、拒絶し続けろ。莉華を愛しているのなら、受け入れるな。俺への迷惑も、莉華の身も、全てを忘れて、自分がどうしたいのかを考えればいい」
俺達は、少し前まで普通の人間であった。
それを許されたのは、"無知”だったから。
生まれた時から、この家にいれば……そう考えると、自分たちの未来は違っていただろう。
あくまで、夫婦喧嘩によるものだったのだが……母親には、感謝を感じずにはいられない。
この家から、引き離しておいてくれたことを。