☆君との約束
愛side陽希
一人の女性は、ぼんやりと空を眺めていた。
車イスにのって、ぼんやりと。
「莉華」
そこに訪ねてきた、一人の男性。
「あ、御園さま。よくいらっしゃいました」
女性と共にいてくれた看護師さんが、彼に微笑む。
「良かったですね、莉華さん。陽希さんがお越しになられましたよ」
「……」
看護師さんに声をかけられて、ぼんやりと空を眺めていた目を陽希に向ける。
「……どなた?」
本気でわからないという表情。
それを見て、陽希の心は痛む。
「莉華、久しぶり」
陽希は一人だった。
誰も、つれてこなかった。
「ねぇ、ねぇ、私の猫はどこ?」
「ん?」
花束を莉華に持たせて、陽希は聞き返す。