☆君との約束
仕事中、かかってきた電話。
あれほど恐ろしかった電話は、後にも先にもない。
御園の家を出ても、御園と関連した仕事をしていくように手続きをしていた俺はその電話を取った瞬間、何かのネジが頭の中で吹っ飛んだ気がした。
『兄さんっ、早く帰ってきて!!莉華義姉さんが―っ!!』
―春馬の、焦る声。
どうして、と、そう思った時には遅くて。
駆けつけた先にいたのは、布団に横たわった意識のない莉華と泣きじゃくる10歳の春馬の姿があった。
そして、傍には悲しんでいるふりをしている御前の人間。
医者も来ていて、その医者―倉津貴弘(クラツ タカヒロ)と、後に医学界を騒がせる、鬼才の医者・18歳の松山久貴。
『……問題ありません。けれど、この家に置いておくのは危険だと思われます』
『何が危険と申されるのですか?かの方は陽向様の大切な奥方様ですよ』
―それを、傷つけたのは誰だ。
どれだけ、莉華が耐えてきたと思っているんだ。
お前達の身勝手に、どうして俺達が振り回されなければならない。
俺達はただ、幸せになることを望んでいるだけなのに。
―でも、ここでは口に出せない。
口に出してしまったら、それはきっと、巡り巡って両親に迷惑がかかってしまうから。
この男は後で、裏で処分しよう。
―そう、誰にも見つからないように。