☆君との約束



『さて……と』


久貴くんは背伸びすると、俺の横にしゃがみこんで。


『ねぇ、陽向さん』


『……なんだ?』


『貴方、この人のこと大事?』


『……』


大事だ。


何の目にも触れさせず、ずっと、自分だけのものにしておきたいくらいに。


でも、そんなことを自分に言う資格はあるのか。


無言で、莉華の頬にかかった髪を払ってやる。


『…………なるほど』


何も言っていないのに、勝手に納得した彼は。


『―みたいだよ?諦めたら?』


と、集まっていた女や御前当主に目を向けた。


『は?何を仰っているのか―……』


『あんたさ、化粧濃ゆ過ぎ。臭いよ。鼻つまんでも、気持ち悪くなる。ってか、なんの為にしてるの?自分の素顔に自信ないの?なら、化粧よりも整形しなよ。完璧な整形出来るやつ、知り合いにいるよ。紹介しよっか?』


高校三年生―いや、これから、この国の中で最難関の大学の医学部を受けるという、久貴くんは。


綺麗な笑顔に、完璧な笑みを浮かべて。


『病人の居る部屋に、そんな厚い化粧とか……馬鹿じゃない?香水もつけすぎ。そんなん、キスとか抱くとか、そういう行為の前に近づきたくないな。俺なら』


女は顔を赤くして、黙り込む。


< 52 / 119 >

この作品をシェア

pagetop