☆君との約束
『さて……と』
久貴くんは背伸びすると、俺の横にしゃがみこんで。
『ねぇ、陽向さん』
『……なんだ?』
『貴方、この人のこと大事?』
『……』
大事だ。
何の目にも触れさせず、ずっと、自分だけのものにしておきたいくらいに。
でも、そんなことを自分に言う資格はあるのか。
無言で、莉華の頬にかかった髪を払ってやる。
『…………なるほど』
何も言っていないのに、勝手に納得した彼は。
『―みたいだよ?諦めたら?』
と、集まっていた女や御前当主に目を向けた。
『は?何を仰っているのか―……』
『あんたさ、化粧濃ゆ過ぎ。臭いよ。鼻つまんでも、気持ち悪くなる。ってか、なんの為にしてるの?自分の素顔に自信ないの?なら、化粧よりも整形しなよ。完璧な整形出来るやつ、知り合いにいるよ。紹介しよっか?』
高校三年生―いや、これから、この国の中で最難関の大学の医学部を受けるという、久貴くんは。
綺麗な笑顔に、完璧な笑みを浮かべて。
『病人の居る部屋に、そんな厚い化粧とか……馬鹿じゃない?香水もつけすぎ。そんなん、キスとか抱くとか、そういう行為の前に近づきたくないな。俺なら』
女は顔を赤くして、黙り込む。