☆君との約束
『自分のことしか考えられない、単細胞バカは引っ込んでてよ。そんな奴が、この家の奥方と呼ばれるようになったって、みんなが迷惑するだけだよ。この家は大きいんだ。世界に影響を及ぼす程』
『〜〜〜っ』
『強いては、俺らに迷惑がかかるんだよ。愛されていなくても、奥方の称号を手に入れたあんたらに』
ハッキリと物申す、堂々とした久貴くんの態度に、誰もが目を見開いていた。
『彼女が弱い?―だったら、お前も同じ目を見てみろよ』
近づいて、御前当主の頭を掴む。
『死んでみるか?―ちょーど、人体実験のための人体を探してたんだよなー』
『ひっ……』
『俺には両親がいなくてね、貴ちゃんは俺のやりたいことをやりたいだけやる姿を見て、呆れながらも、世界中を連れ回してくれる、最高の医者なんだよ』
倉津医師は、焔棠の人間のことも治療するような、光とも闇とも取れない境で生きている人間だ。
だからこそ、この家にも足を踏み入れることが出来た。
『そんな貴ちゃんの役に立ちたくて、半分は興味本位で、薬を開発してみているんだ。まぁいつかはどの業界でも認められる医者になるつもりだし、それで不器用でどうしようもない幼なじみのことも支えたいし、何より、守りたい大切な女がいる。―お前にはいないのか?なら、お前が死んでなく奴らもいねーな?ってことで、世界中の人のためにその身体、くれねえ??』
ニッコリと、笑顔で話す久貴くん。
その表情には優しさなんてものは見つけられない。
あるのは、ただ、真っ直ぐな射抜かんばかりの強い瞳。