☆君との約束
でも……目が覚めた。
―陽希が思い切り、頬を殴り飛ばしてくれたお陰で。
『……これさ、普通の怪我人にしていたら、かなり、問題事だよね』
『お前、俺の弟で良かったな』
鬼の血が俺よりも強くて、これから先、誰よりも苦労するであろう兄の言葉はストンと、胸に落ちて。
『……やってやろうか』
俺は毅然と、顔を上げる。
それからというもの、閉じ込められたり、殺されそうになったり、食事には毒が入っていたり……春馬が壊されたりと色々あって、あの日、莉華の見張りを頼んでいた使用人頭は病気の父親を人質に取られ、逆らえなかったという話を聞いて……その後、彼女は自殺未遂を起こし、ギリギリのところで久貴くんたちに助けられていたことなんかの話も聞いて、会いにいくと、土下座して謝ってきた彼女は、深く憔悴していた。
そんな彼女にこれからも勤め続けるように命じ、父親は久貴くんが学んでいるという、倉津医師の個人院に入院させて、彼女は生涯を、俺達のために捧げると、大袈裟に誓っているのを見て、笑みが漏れた。
莉華を壊しておきながら、笑う資格がないのはわかっている。
それでも、彼女が戻ってきてくれた時、笑顔で迎えてあげたいから。
彼女の居場所を守ること。
―それが、自分の真っ直ぐな愛し方だと思えたから。