☆君との約束
"おかえり”と言う、その日まで side陽向
「莉華、昨日は―……」
毎日、毎日、君と向かい合って、話す日々。
理解は出来ていないかもしれないけど、彼女はずっと笑って、頷いて。
それだけで、幸せで。
「陽向」
莉華の発症から、八年。
変わらず訪ね続ける俺のことを覚えてくれた莉華は、笑顔で話してくれる。
「莉華、大好きだよ」
「?」
愛してる。
きっと、通じない言葉だけど。
微笑みあっていると、
「陽向さん、ご飯、」
久貴に、声をかけられて。
「え、もうそんな時間?」
「莉華さんはちゃんと食べてるのに、陽向さんが抜いてどうするの。莉華さんが目覚めた時、心配させるつもり?」
「ん゛ん゛っ〜」
「誤魔化す時のくせ、本当に独特だよね。陽向さんって」
「君も辛辣になったというか……本当に、20代?」
「20代だよ。28」
白衣を身にまとった彼は、元より、向こうの大学で一通りの研修を終えていた成果だろう。
彼女と薬研究に六年間を費やしておきながら、ケロッとした顔で、医者になってしまった。
そして、誰でも平等に見て回る彼は、相当に人気が高い。
医学界も、次から次に驚くことを起こされて、ついて行かないらしい。
権力社会が嫌いで、人に媚びない彼は一人での地位をどんどん確立していって。