☆君との約束
久貴が初めて、助けられなかった人。
―それが、最愛の人。
その後も縁談を持ちかけられたり、モテるのは変わらないらしいけど、彼自身、それを拒絶している。
『俺、妻一筋なんで』
その一言は、業界ではかなり有名だ。
メディアの軽率な質問で、世界中に放映されてしまったもので。
それが、また、彼の人気を高めたと言っても過言ではない。
「沙織ね、ずっと、言ってたんです。俺が医者になるの、すごく楽しみって。……結局、正式な医者としての姿は見せてやれなかったけど……願いますよ、また、あいつに会えることを」
「……」
「死んでからも、会いたいと思える女に会えたって、かなり幸せ者でしょう?俺」
―その時に笑った久貴は、とても幸せそうで。
「……そうだね、確かにそうだ」
同意していたら、莉華を思い出す。
あの出会った日が、運命の日だったのだと。
彼女が想いを伝えてくれなかったら、
すぐに諦めるんじゃなくて、まだ、想い続けていたいと願ってくれなかったら、俺はきっと、彼女自身に興味を持つことは無かったから。
一瞬一瞬がきっと奇跡で、その一瞬があるから、人は人を愛して、どうしようも無くなって。
不安でできている恋愛を、誰もがしたいと思ってしまうのは、寂しいからかもしれないね。
探しているからかも、しれないね。
運命の人ってやつを。