☆君との約束
それを考えると、俺達はきっと、春馬にかなり酷なことをしているのだと思う。
家のことが解決した今、傷つけないように、和子をどうにかすることは出来ないだろうか?
「……陽向さん」
「ん?」
「幸せだね」
「……」
片や、最愛の妻を失った、シングルファザー。
片や、最愛の妻を追い込んだ、加害者夫。
本当に、ちゃんと考えてみたら、幸せなんて言える状況ではないと思う。
それでも、そう思えてしまうのはきっと、彼女たちの言葉が、存在が、温もりが、笑顔が、彼女たちとすごした一瞬一瞬が、俺たちを生かしてくれているから。
「……幸せ、だね」
誰かが幸せになれば、この世界では誰かが悲しむ。
自分が幸せになる代わりに、この世界の誰かが必ず悲しむんだってこと、分かってる。
分かっているけど、仕方ないよね。
俺たちだって、幸せになりたい。
そう思っても、いいだろう?
「これから、どうするの?」
「……気長に、待ち続けるよ。前は待たせたからね。今度は、俺が『おかえり』って言うんだ」
それが、何年後になろうとも。
必ず、生きて待ってるよ。
君が先に、死んじゃうかもしれないね。
でも、それでも、必ず、言い続けるよ。
『愛してる』って。
―とりあえず、君に、"おかえり”って言える日まで。