☆君との約束
「はるくん!早うしてや!うち、死ぬで!?」
最大の、春馬が嫌いな脅し。
仕事で、産んですぐから少し睡眠を取って、布団の上でも仕事をこなそうとした和子は偉いし、まだ、28なのに……すごいと思うよ。
そして、だからこそ、自身が産み落とした子供に対面する時間がなかったのは分かる。
―でもな?
「……っ、〜〜ね……」
春馬の手が震える。春馬は相馬に一言だけを囁くと、陽希に相馬を預け、無言で、和子を抱きしめた。
汗が流れ、震えは止まらず、でも、それに気づきもせずに、和子は幸せに酔いしれる。
(……ふざけるな)
伯父さんと伯母さんには悪いけど、どうしても、身のうちから沸きあがる怒りを、熱を、収める方法がわからなかった。
気を抜けば、日本刀を振りかざしてしまいそうだった。
耐えられなくて、真っ先に家から飛び出した俺は、莉華のところへ向かった。
子供を授かれず、壊れて行った妻。
あれから、もう、何年経つ?
十五年。―その年月はあまりにも長く、その生きる中での自由な時間を、俺は莉華から奪ったわけで。
吹っ切れたはずの思いが蘇り、泣いてしまった。
"俺のせいで、ごめんっ”
―そう、相馬を抱きしめて、苦しそうに泣いた、春馬を見て。