☆君との約束



「―陽向!」


莉華を抱きしめて、声を殺していると、後ろから呼ばれて。


振り返ると、陽希がそこに魅雨と立っていた。


「……っ、陽希?」


涙を拭って、手招きされる方へ行こうとすると、莉華に服を引っ張られて。


「……莉華?」


名前を呼んでも、こっちを向いてはくれないのに。


莉華の手は、離れることはなくて。


「陽希、行けない」


「……」


「お前がこっち、来れない?」


でも、扉のところに隠れて、彼らは動かない。


「無理、だろ……」


「……」


狼狽えて、何かを抱えて。


「…………連れてきたの?」


目を見張ると、魅雨が寄ってきて。


「和子さんが―……」


―とてもじゃないけど、そばに置けない状況になったらしい。


『その子のせいで、はるくんはうちんことを見てくれへんの!?なら、その子を―……』


和子の能力だと、赤子を首り殺すことなんて容易い。


危惧した春馬によって、ここに避難してきたらしく。


「春馬がゆっくりと言い聞かせるから、陽向に相馬を託したいって……」


「……俺に、本家から出ていけって?」


「……」


「それで……莉華は傷つかない?」


莉華が人質に取られていたから、動けなかったのだ。


そうでないのなら、今すぐにでも飛び出す。



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