☆君との約束
「大丈夫。春馬が絶対、そんなことはさせないと。春馬が……自分が支配いるということは、自分も和子を支配することが可能なはずだから、と」
春馬は、自分で考えるようになった。
自分で考えて、結果を出した。
それが、あいつなりの自分の人生の歩き方か。
「いつか、また、抱きしめられるようにって―……」
和子はきっと、相馬を受け入れない。
そんなことは、この時期からわかってた。
「ごめん、莉華……ちょっと、行ってくるね」
莉華の手を掴んで、そっと離して。
相馬の方へ行こうとしたけど、また、その手に力は込められて。
「……」
こっちを見ても、くれないのに。
仕方が無いので、陽向は自らの首元からネックレスを外して、それを莉華の掌にのせた。
「帰ってくるよ。大丈夫だから」
そう言って微笑みかけると、手を離してくれた莉華。
ゆっくりと歩いて、陽希の元へ向かう。
陽希の腕の中ですやすやと寝息をたてる子は、不思議と愛しく感じてしまう。
「……可愛いな」
自然と笑みが漏れて、小さい子供の頬を撫でると、顔を動かした赤ちゃん。
「……和子は、もう、戻ってこれないな」
「多分……」
「京子だけは、そんな目に遭わせねぇようにしないと」
「……」
あの家の中で、1度壊れた人間の修復はかなり難しい。
端っこの方にいた莉華でさえ、この調子なのに。
辛かった、悲しい記憶を全て、消してあげられるのなら―……そうしたら、彼女たちは何も知らないまま、幸せな人生を歩めるだろうに。
残念ながら、記憶を消すなんて術、ありはしない。