☆君との約束



子供の相手をしてくれるのは助かるが、何か、親として負けた気分である。


「戻りましたー」


眼鏡をかけ直した時、意外と早く戻ってきた魅雨。


「陽向さんはどれがいい?」


見せられた、袋の中。


相馬と依には陽希も魅雨も甘くなってしまうのか、何か、ジュースがかなり多く感じる。


「じゃあ……」


コーヒーもかなりの量があって、その中で一番好きなメーカーのブラックコーヒーを取ろうとした時。


「ねぇ、お母さん!」


……依が、そう、莉華を呼んだ。


「って、違う!ごめん、莉華ちゃん……」


莉華のことは、二人に『心の病気』と説明している。


頑張って戦っているから、応援してあげてと。


死んでしまった実母を相手にしているように、そう呼んでしまったのだろう。


今更、繕いようがないし、何より、依がそう呼んだことで、死んだ両親のことについて思い出していないか、心配で―……。


「ひなくんっ、ごめんなさい……」


依はこちらに駆けてくると、抱きついてきて。


「大丈夫だよ。俺は依のお父さんでしょ。それなら、莉華はお母さん。ある意味、間違ってないから」


「大丈夫、かな……」


「大丈夫」


よしよし、と、頭を撫でてやる。


「……正直、かなりビックリしました」


そして、今のことについて、そう言った魅雨。


「だね」


まさか、自然にでもそう呼んでくれるなんて。


なんでかな。


少し、嬉しい。


でも、喜びも束の間。



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